エヌビディア(NVDA)徹底解説-②|ポストAI時代に向けた今後3〜5年の展望を探る

未分類

エヌビディアはパソコン向けGPUの開発から始まり、生成AIの成長という大きな波を掴み飛躍的成長を果たしました。
生成AIの盛り上がりによって近年はデータセンター向けのGPU需要が急拡大し、2025年度の総売上は前年度比2倍以上の約1,305億ドルに達しています。
前回の記事ではエヌビディアの急成長の要因やその背景などを紹介してきましたが、投資目線で重要なのはむしろこれからの展開です。
はたしてエヌビディアは今後も成長を続けていけるのでしょうか。
それは何よりもエヌビディア自身が真剣に考えている課題でしょう。
そこで今回はエヌビディアの見据える次の成長戦略について、主要分野ごとに2025年時点から見た今後3〜5年程の戦略と取り組みをわかりやすく解説します。
尚、これまでの事業の内容や成長の軌跡については対象の記事を参照下さい。

データセンターとクラウド向け事業

まずは中核事業となっているAI開発とデータセンター向けのGPU事業の現状と戦略を見てみましょう。
近年の生成AIの盛り上がりにより、エヌビディアのデータセンター向けGPUの需要は前例のない規模で伸びています。
データセンター部門の売上は2024年から急拡大し、2025年度には全社売上の約88%を占めるまでになりました。
特にAI開発の基幹となる大型言語モデル(LLM)の学習や推論においては、エヌビディアのGPU製品「H100」や後継の「Blackwell」が事実上独占的な基幹パーツとなっており、多くの開発企業がエヌビディア製品を導入している状況になります。
AI開発を筆頭に需要が急増するクラウド・サービスでも、アマゾン(AWS)やグーグル、マイクロソフト、オラクルといった超巨大IT企業が競ってエヌビディアの最新 GPUシステムを拡充し、AI需要に応えています。
更にエヌビディアは自らもクラウドでGPUを提供する「DGX Cloud」サービスを立ち上げました。
同サービスではアマゾン(AWS)との提携によってユーザーが容易に利用できる仕組みを構築しています。

世界中で進むAIインフラ工場計画

ジェンスン・フアンCEOは、AI時代のデータセンターを「AI工場」に例えています。
電力(エネルギー)を投入すると、高価値な生成物(コンテンツ)が生産される施設という意味で、AIを運用するデータセンターシステム全体を社会の新しいインフラと捉えています。
フアンCEOは、このAIインフラが将来的に「数兆ドル規模」に達する産業になる可能性があると予測しており、その中核となるプラットフォームをエヌビディアが担おうとしています。
エヌビディアでは次世代GPU「Blackwellシリーズ」を搭載した大規模なシステムを2025年に投入し、従来比で数十倍にもなるAIデータの処理能力を実現しました。
更には開発したプラットフォームを活用して、世界各地でAI仕様のデータセンターを展開するプロジェクトを進めています。

サウジアラビア

サウジアラビアでは政府系ファンド(PIF)傘下のヒュメインが、今後5年間でエヌビディア製最新GPU数十万個を備えたAIスーパーコンピュータ群(累計500MWのデータセンター容量)を建設する計画を発表しています。

欧州

欧州でもフランスや英国を中心に、エヌビディア製Blackwellアーキテクチャの大規模クラウドAI基盤(3000エクサフロップス超の計算能力)を共同で構築する取り組みが始まっています。
エヌビディア自身もドイツに自社のAI計算センター(AIファクトリー)を建設し、欧州の産業向けAI活用を後押しする計画です。

台湾

台湾政府やフォックスコン(鴻海)とも提携し、台湾に最先端の巨大AIスーパーコンピューターを建設すると表明しました。
TSMCや台湾の主要電子機器メーカーが多数協力しており、地域のAIインフラ強化とパートナーエコシステムの構築を進めています。

このようにエヌビディアは世界中の政府・企業と協力してAI時代の基盤整備を行い、自社技術の標準化と普及を図っているのです。

ハードからソフトまでを網羅するプラットフォーム

エヌビディアのデータセンター戦略の強みは、単に高速なAIチップを提供するだけでなく、ハードからソフトまで一貫したプラットフォームを構築している点です。

GPU同士を高速に結ぶ技術(NVLinkインターコネクト)や、2020年に買収したメリノックス社のInfiniBandネットワーク技術などを組み合わせて、数千台規模のGPUでも効率よく動作するAIスーパーコンピュータ構築技術を持っています。

また自社設計のCPU(Grace CPU)とGPUとを組み合わせた「Grace Hopper(GH200)スーパーチップ」を投入して、CPUとGPUの統合による効率向上を図っています。
クラウド事業者や大企業はエ自分でスーパーコンピューターのシステムを構築しなくても、エヌビディアから完成度の高いAI計算プラットフォームを一括で導入することができます。
フアンCEO自身、「我々はAI工場を構築するために必要なあらゆる部品を持ち、それらを統合できる独自の能力がある」と自信を示しています。
ワンストップ型サービスの提供は、半導体チップ単体の性能競争以上に大きな付加価値となっており、競合他社との差別化要因になっています。
競合のインテルやAMDもデータセンター向けGPUや関連技術を追随して投入していますが、ソフトウェア・サービスまで含めた包括的なエコシステムでは依然としてエヌビディアが先行しているのが現状です。

ゲームとグラフィックス事業(GeForce・RTXシリーズ)

エヌビディアの原点ともいえるゲーミングGPU事業は、好調なAI需要に押されて同社の売上全体に占める割合こそ小さくなりましたが(2025年度は全売上の約9%に相当)、依然として堅調に推移しており、エヌビディアが引き続き業界をリードしています。

最新版「RTX-50シリーズ」

2025年初頭、エヌビディアはゲーム向けの最新GPUシリーズ「GeForce RTX 50シリーズ」を発表しました。
RTX50シリーズはトランジスタ数が約920億個にも及ぶ強力なGPUで、前世代と比較すると最大で2倍近い性能向上を達成しています。デスクトップ向けに続きノートPC向けの製品も展開され、幅広いゲーマー・クリエイター層に訴求しています。

RTX-50を支える技術

GeForce RTXシリーズの特徴は、リアルタイム・レイトレーシング(光線追跡)とAIを活用した描画技術にあります。
ゲーム中で映画のような高度なライティングや影表現を可能にするレイトレーシングは、2018年の導入以来、競合他社に先駆けたRTXシリーズの大きな差別化ポイントでした。
またAIによってゲーム画面を高精細化・高速化する技術「Deep Learning Super Sampling(DLSS)」も同社の強みです。
最新版のDLSSでは1つのフレームを計算するごとに、AIがさらに3フレームを予測生成することでフレームレートを最大で8倍も向上させ、これにより負荷の掛かるレイトレーシングを有効にしても滑らかなゲーム体験が得られるようになっています。
また遅延低減技術「Reflex 2」は、PCゲームにおける入力から画面表示までの遅延を最大75%も短縮できるとされています。
こうした技術・機能は競合のAMD製GPUにはない強みであり、eスポーツやゲームをプレイするユーザーに訴求する大きな魅力となっています。

ゲーム以外への広がりと将来展望

エヌビディアの「GeForceシリーズ」はゲーム用途のGPUとして知られていますが、その性能の高さによりクリエイティブ用途や研究用途にも広く使われています。
「RTX Studio」認定のノートPCは動画編集や3DCG制作などクリエイター向けワークロードを高速化し、映像業界や建築デザイン分野でも支持されています。
また最近エヌビディアはPC上での生成AI活用にも力を入れており、ゲーミングGPUをAI研究や開発に利用できる環境を整えています。
同社は2024年、RTX搭載PC向けに大規模言語モデルや画像生成AIを手軽に動かせるAIマイクロサービス(NVIDIA NIM)やAIブループリントを公開しました。
これにより、開発者や上級ユーザーは自分のPCでチャットボットや画像生成などのAIエージェントを構築しやすくなっています。
ハード・ソフト両面でPCをAI対応させていく戦略は、「ゲーム用途だけでなく家庭にもAIを浸透させる」狙いと言えます。
さらに将来を見据えると、エヌビディアGPUはコンシューマーデバイスへの組み込みも進むとみられます。
実際、次世代の任天堂ゲーム機(いわゆる「Nintendo Switch 2」)にはエヌビディア製の新型チップが採用され、DLSS技術を使って据置型並みの4Kグラフィックスを実現するとの報道もあります。
こうした動きが現実となれば、エヌビディアのグラフィックス技術とAI機能が家庭用ゲーム機にも搭載され、ゲーム・グラフィックス事業はさらに広範な市場で展開していくでしょう。

自動運転・車載向けプラットフォーム(NVIDIA Drive)

エヌビディアは自動車産業向けに「NVIDIA Drive」という包括的プラットフォームを提供しています。
NVIDIA Driveは、自動運転及び高度運転支援を実現するための車載AIコンピュータと、その上で動作するソフトウェアで構成されるプラットフォームです。
エヌビディアは2010年代から車載向けGPUの開発を始め、現在は「Drive Orin」という高性能な管理システムを展開しています。
Drive Orinは1秒間に数百兆回の演算が可能で、安全運転のための「頭脳」として車に搭載されます。
さらにDrive Orinの後継として「Drive Thor」と呼ばれる次期統合プラットフォームも予告されており、車内エンターテイメントの提供から自動運転までのコンピューティングを一括処理する構想が示されています。
このように、エヌビディアの車載戦略はハードウェアとソフトウェアをセットで自動車メーカーに提供し、支援するものです。
エヌビディアのDriveプラットフォームは世界中の自動車メーカーから注目されており、既に広範なパートナーシップが結ばれています。
ドイツのメルセデス・ベンツは、2024年以降発売の新型車すべてにNVIDIA Driveを標準搭載すると表明し、共同で自動運転技術を開発しています。
トヨタも2025年の次世代車両にDrive Orinを採用し、エヌビディアのDriveOS上で高度運転支援を実現する計画です。
トヨタは自社の次世代車すべてにNVIDIA DRIVE AGX Orinを搭載することを決定しており、運転支援機能の飛躍的進化を目指しています。
韓国ではヒュンダイ(現代自動車)グループもエヌビディアのDriveプラットフォームを活用したスマート車両や製造効率化を進めると発表しました。
米国では2024年にゼネラルモーターズ(GM)との包括提携が発表され、次世代EV車種へのNVIDIA Drive搭載に加えて、工場の自動化やロボティクス分野でも協業する計画を明らかにしています。
このように多くの有力自動車メーカーがNVIDIA Driveを採用しており、エヌビディアは自動運転時代の「プラットフォーム・サプライヤー」としても存在感を高めています。

開発から実装への移行と収益拡大の可能性

自動運転分野は長く開発投資のフェーズが続いていましたが、2024頃から量産車に高度なAIコンピュータが搭載され始め、エヌビディアにとっても本格的な事業拡大期に入りました。
エヌビディアの自動車関連事業は2025年に累計110億ドル規模の受注残を抱えているとされています。これは自動車メーカーから出荷台数に応じた収益が発生する時期が近づいていることを示します。
2025年度の自動車部門売上高は17億ドルと前年度比55%増加し、四半期ベースでも過去最高の5億7000万ドルに達しています。
現在は高級車ブランドでの採用が中心ですが、今後数年で様々な価格帯の車両に広がれば更に売上は増大すると期待されます。
フアンCEOも「これから数年間で自動運転開発のペースは劇的に加速する」と述べています。
但し自動運転の本格普及には規制やインフラ整備など課題も多く、市場の立ち上がりには不確実性も伴います。
それでもエヌビディアはハードからソフト、シミュレーション環境まで包括的に支援するポジションを確立しており、長期的な潜在市場規模は3,000億ドル(約40兆円)以上と見積もられるこの市場で事業が軌道に乗れば、大きな成長ドライバーになるでしょう。

ロボティクス・エッジAI(JetsonやIsaacプラットフォーム)

組み込みAIコンピュータ「Jetson」

エヌビディアは、小型デバイスやロボット向けのエッジAIコンピューティングにも注力しています。
その中心となるのが手のひらサイズの組込みAIコンピュータ「Jetson」です
2022年以降、最新世代となる「Jetson Orin」がリリースされており、ドローンや産業用ロボット、AIカメラなどに組み込まれて利用されます。
省電力で強力なJetsonにより、現場でセンサーデータをリアルタイムに解析したり、小型ロボットがクラウドに頼らず自律動作したりできるようになります。
Jetsonシリーズは各種の開発キットとしても提供されおり、スタートアップから研究機関まで幅広いユーザーが開発に活用しています。

IsaacシミュレーションとロボットAI:

ロボティクス分野では開発者向けのシミュレーション環境「NVIDIA Isaac」というプラットフォームを提供しています。
Isaacは仮想空間上でロボットのAIをテストしたり訓練したりすることができます。
現物のロボットを大量に用意しなくても、仮想環境内で動作の挙動を再現し、大規模な試行を行えるためロボット開発の効率と安全性を飛躍的に高めます。
2025年には、Isaacプラットフォーム上で動く自律移動ロボット(AMR)向けソフトウェアや、人型ロボットのための基盤AIモデル「Project GR00T」を発表しています。
GR00Tは巨大なデータからロボットの動きを学習する汎用モデルで、将来の人型ロボットに知能を与える基盤になるものと期待されています。
またエヌビディアはグーグル・ディープマインドやディズニーと協業して、ロボットの物理挙動を学習させるための物理シミュレーションエンジン「Newton」も開発しました。

エヌビディアのこうした取り組みは、あらゆる現実空間のAI化する「フィジカルAI」事業を支えるサービスです。
フアンCEOは「ChatGPTが言語で起こしたような汎用ロボットの転換点が目前に迫っている」と語っています。

産業分野への応用と展望

エヌビディアのロボティクス技術は、産業用途にも着実に広がっています。
物流倉庫での自動搬送ロボット(AMR)や工場の組立ロボットなどで、同社のJetsonやIsaacが活用され始めています。
2024年には大手コンサル企業のアクセンチュア、物流機器メーカーのKIONが倉庫の自動化にエヌビディアのロボティクス技術を導入することを発表しました。
ロボティクス+AI+シミュレーションを組み合わせた統合サービスの提供は、エヌビディアの新たな強みとなりつつあります。
現時点でロボティクス&組込み事業の売上規模は全体の数%程度ですが、長期的な市場潜在性は非常に大きいため、今後技術のブレイクスルーが起きれば、エヌビディアの成長を支える新たな柱に育つ可能性があります。

ソフトウェア戦略とエコシステム構築

開発プラットフォーム「CUDA」

エヌビディアの競争優位を語る上で、ソフトウェアシステムの重要性は欠かせません。
同社は2006年にGPUを汎用計算に使うためのプラットフォーム「CUDA」をリリースし、以降数十年にわたり膨大な投資をソフトウェアに注いできました。
CUDAはC言語風のインターフェースでGPUを制御できる開発環境ですが、これをベースに以下のような用途ごとのソフトウェアを拡充しています。

  • ディープラーニング用のcuDNNライブラリ
  • 推論最適化のTensorRT
  • 科学技術計算用のCUDA-Xライブラリ

その結果、AI研究者やエンジニアにとって「とりあえずエヌビディア製のGPUを使えば必要なツールが揃う」こととなり、エヌビディアの新しいGPUが出てもすぐに活用できるので安心して製品を選択できるという状況を生み出しています。
競合のAMDやAppleのGPUなどでもAI計算は可能ですが、対応ライブラリや開発コミュニティの充実度でエヌビディアには大きく水をあけられており、事実上開発現場ではCUDAがAI計算の標準となっています。

AIエンタープライズとNIMs

企業向けには「NVIDIA AI Enterprise」という包括的ソフトウェアサービスも提供されています。
これは仮想化環境やクラウド上でAIソフトを動かすためのプラットフォームで、モデルのトレーニングから推論、デプロイまでを支援します。
2024年にはEnterpriseサービスの中で新たに「Nvidia Inference Microservices(NIMs)」と呼ばれる製品シリーズが公開されました。
NIMsは事前学習済みのAIモデルや推論パイプラインをパッケージ化したもので、企業が自社アプリに組み込みやすいよう設計されています。
チャットボットや音声認識など特定の目的向けに必要な機能を纏め、インフラやデータ準備の煩雑な作業を肩代わりすることで、専門知識のない企業でも高度なAIを利用できるようにする狙いです。
NIMsは有償のソフトウェアサービスとして提供され、例えば1GPUあたり年額4500ドル程度のサブスクリプションで利用可能です。
このようにエヌビディアは単なる「半導体チップ屋」を超えてAIインフラを提供するプロバイダへと進化を遂げつつあります。

メタバース実現基盤「Omniverse」

エヌビディアはリアルタイムシミュレーション&3Dコラボレーションプラットフォーム「Omniverse」も展開しています。
Omniverseはメタバースや仮想実験の実現基盤として位置づけられ、複数のユーザーが物理的に正確な3D空間を共有・編集できる環境です。
CAD設計データやIoTセンサー情報などを仮想空間上で再現できるため、製造業や建設業でのデジタル試作に活用されています。
工場設計の最適化や自動運転のシミュレーション、ロボットの訓練など、Omniverseはハードウェア事業と密接に結びついてエコシステムを形成しています。
またここでも開発者コミュニティ支援策として、投資や技術協力によるスタートアップ支援や、人材育成、各種ハッカソンの開催などの活動も活発です。
エヌビディアでは年間売上の20%以上を研究開発費に充てており、ハードウェア、ソフトウェア環境両方の充実に力を入れており、競争優位性を支える力となっています。

M&A・パートナーシップ戦略と地政学リスクへの対応

エヌビディアは戦略的な企業買収(M&A)も積極的に行ってきました。
2020年にはイスラエルのネットワーク機器大手メリノックス(Mellanox)を約70億ドルで買収し、AIスーパーコンピュータ構築において極めて重要な技術である高速ネットワーキングやデータセンター相互接続技術を獲得しました。
2021年には自動運転用高精度地図のDeepMap社、2022年にはHPCクラスタ管理ソフトのBright Computing社を買収し、それぞれDriveプラットフォームの機能強化やエンタープライズ向け製品に活用しています。

一方で2020年に発表したイギリスARM社の買収計画は各国規制当局の反対に遭い2022年に断念しました。
しかしながらARMのCPU技術はライセンス供与という形で取り込んでいます。

エヌビディアのM&A戦略は、巨額の大型買収よりもピンポイントの技術獲得にフォーカスしたものが多く、買収後の統合も比較的上手く進めています。

幅広いパートナーシップ

M&Aと並んで重要なのがパートナーシップです。
エヌビディアはアマゾン(AWS)、マイクロソフト(Azure)、オラクルといったクラウドサービス各社との連携を深め、自社GPUを使うサービスとして共同展開しています。
通信業界ではVerizonと協力して5GネットワークとAI基盤を統合し、工場や都市インフラ向けの新サービスを開発中です。

自動車業界でもトヨタやメルセデス、ヒュンダイなどとの協業しています。
台湾の大手EMSであるFoxconn(鴻海)とは包括提携を結び、Drive Orinを搭載したEV(電気自動車)プラットフォームを共同開発しています。
フォックスコンは完成車メーカー向けにエヌビディアのOrin搭載の電装システム供給も行う予定で、自社チップの自動車業界普及を加速する重要パートナーとなっています。
医療分野ではシーメンスヘルスケアやマヨ・クリニックと組んで医用画像AIの高度化に取り組み、製薬・バイオ分野では遺伝子解析大手イルミナ社や研究機関と協力して創薬AIを進めています。

金融サービスではパートナー企業とAIによる業務自動化ソリューションを開発するなど、業界ごとの横展開も図られています。
こうした多方面との連携は、単に販売チャネル拡大にとどまらず、各分野の知見を取り入れて自社技術を改善する効果ももたらしています。
エヌビディアのエコシステムは、自社単独ではなくパートナー含めた「共創モデル」で拡大し続けています。

地政学リスクへの対応

最後に、エヌビディアが直面する地政学的リスクとその対応について触れます。
最大の懸念は、アメリカと中国の対立に起因するハイテク輸出規制です。
中国はエヌビディアにとって大きな市場ですが、米政府は2022年以降、先端半導体技術の対中輸出規制を段階的に強化してきました。
特に2023〜2025年にはエヌビディアの最先端AIチップ(A100やH100、さらに次世代の新製品)を中国へ販売するには許可が必要となり、大口受注が停止される事態も起きました。この影響で、エヌビディアは2025年には約45億ドル相当の在庫損失を計上し、四半期あたりでも数十億ドル規模の売上機会を失ったと推計されています。
同社は対策として、中国向けに性能を抑えた代替GPU(A800やH800など)を投入し規制基準を満たす対応を取りましたが、それでも完全には埋め合わせできず、中国市場の伸びは制約を受けています。
一方で中国国内では、Huawei(華為)をはじめとする企業が独自のGPUに相当するAIチップ開発を加速させており、エヌビディアH100クラスに迫る製品も登場し始めました。

こうした地政学リスクに対し、エヌビディアは製品ラインナップの地域別調整や、サプライチェーンの見直しで対応を図っています。例えば先述のように台湾など他地域にAIデータセンターを建設する動きは、中国依存を下げる一助となるでしょう。またTSMCなど主要製造パートナーとの関係強化や、将来的には米国内での先端半導体製造プロジェクトにも関与する可能性があります(米国はTSMCやインテルによる国内工場建設を推進中)。さらにエヌビディアは2024年、ベトナムに初の現地R&Dセンターを開設するなど、人材・開発拠点の地域分散も進めています。
加えて米国政府に対しては、CEO自らワシントンD.C.でAI産業の重要性を訴えるなど規制緩和の働きかけも行っています(報道によれば2023年にフアンCEOが訪中し中国当局とも意見交換を行う一方、米国でも要人と面会し輸出規制の緩和を求めたとされています)。
他方で、エヌビディアの圧倒的市場支配に対して米国内で独占禁止の調査も始まっており、同社を取り巻く環境は複雑さを増しています。
もっとも現在のところ、こうした逆風を凌ぐほどの需要拡大と技術リードがあり、エヌビディアの成長ペースはリスクを上回る勢いを維持しています。
同社は引き続きリスクを注視しつつも、世界のパートナーと連携してAIインフラを整備し「AI新時代の基盤提供者」としての地位を固めていく方針です。

まとめ

エヌビディアの事業戦略は多方面に広がっていますが、一貫しているテーマは「あらゆる業界のAI化を下支えするコンピューティングプラットフォームになる」という点です。
データセンターから自動車、ロボットからクリエイティブ領域まで、一つのアーキテクチャ(GPU)とそれを活かすソフトウェア群で横断的にカバーしようとする姿勢は、他社には真似できないスケールメリットを生み出しています。
今後3〜5年では、新しいGPUアーキテクチャの投入(2025年末にはBlackwellの強化版や2026年には次世代「Vera」アーキテクチャの噂もあります)、ArmベースCPUのPC市場参入検討、自動運転対応車の続々登場、そしてジェネレーティブAIのさらなる普及といったトレンドが見込まれます。それらすべての領域で、エヌビディアは自社の技術が鍵になる未来を描いています。もちろん競争や不確実性もありますが、同社の技術的先導力とエコシステム構築力は群を抜いており、AI時代における競争優位性は当面揺るがないでしょう。まさに「AIインフラの巨人」として、エヌビディアはこれからも大きな成長を遂げていくと期待されます。

コメント